05年2月25日  ETC


21世紀に実現することの一つに、高度な知能を持った地球外生命と遭遇すると『感じたこと』の「030707 百年」で宣言したが、この本を読んでその自信がいささか揺れ動いた。
『広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由』 <フェルミのパラドックス> スティーブン・ウエッブ 青土社刊。

スピルバーグ監督の「未知との遭遇」みたいに光り輝くETと感動的な出会いかはたまた恐ろしいエイリアンと絶望的な宇宙大戦争をおっぱじめるのか、それは分からんけど、ともかく単細胞的な生物じゃなく知能をもった宇宙人と遭遇するんじゃないかと思っているんだけど、この本ではそんな体験願望に対して否定的だ。

●「みんなどこにいる?」

 

ノーベル賞を受賞した物理学者フェルミのパラドックスとはこういうことだ。
「宇宙には地球外文明(ETC)があちこちにあるはずなのに、その兆しが見えない。彼らはどこにいるの?」

 

人類の文明の歴史と宇宙開闢127億年のスケールを比べると、人類が特別な存在でない限りこの宇宙にはETCがあちこちいるはずだ。
銀河を旅するETCは地球に到達し、あるいは到達しなくても地球と交信をしてもおかしくないのに、人類がETCと出合ったという証拠がない。これは何故なんだ。おかしいじゃないか。みんなどこにいるの?

 

物理学者の著者はこの疑問に対する回答を50集めて、披露している。

 

●「実は来ている」

例えば回答1は「彼らは来ていて、ハンガリー人だと名乗っている」

かってハンガリーの地にやってきた宇宙人がハンガリー人と名乗っているというわけだ。
ふむふむ。この説に従えば、たしかに宇宙人はいる!

 

●「存在するがまだ連絡がない」

素直な回答は、あまりにも宇宙が広すぎてETCと言えども恒星間旅行が難しい(回答9:「星はあまりにも遠い」)。
こういう回答の前提には我々のもつ物理法則が基本的にこの宇宙を正しく反映しているということを上げられる。

同じようなアプローチとして回答16では「向こうは信号を送っているが、その聴き方がわからない」

何千億とある星の何処とも分からない惑星系からの信号を検出するのは難しい。

ざっとこんな調子で回答が続く。
回答18「こちらの探査方針が間違っている」
回答20「まだ聞きはじめて間がない」

回答26「どこかにいるが、宇宙は想像しているよりよくわからない」

なかにはこんな回答もある。
回答24「向こうは別の数学をつくっている」

こういうことらしい。
イデアの存在を信じるプラトン主義の数学者はカリカリするかもしれないけど、数学体系は人間の頭が考え出したものだ。であれば、整数やeや虚数という概念の無いエイリアンの数学があってもいい。このエイリアン数学体系では心や愛を数式で表すことは出来ても、恒星間旅行を可能にする方程式はでてこないという可能性も成り立つわけだ。

●「存在しない」

存在しなければ、フェルミのパラドックス自体、意味がないんじゃないの?
この章は基本的に宇宙の文明の数を推定する電波天文学者の「ドレイクの方程式」の解が1(ということは地球以外には文明をもった宇宙人がいない)ということを言っている。
ちなみにドレイクの方程式はこうなっている。
N(通信するETCの数)=R(銀河系で一年に星が生まれる割合) ×
            f(惑星をもつ恒星の割合)        ×
            n(その恒星のうち生命を維持する惑星の数) ×
            fl(そのうち生命が育つ割合)    ×
            fi(そのうち知的能力を発達させる割合)  ×

            fc(そのうち恒星間通信能力をもつ割合) ×
            L(そのような文化が通信を行う期間)

回答31は「宇宙はわれわれのためにある」。
知的エイリアンが登場するためには途方も無い確率を超えてこなければならないらしい。
どんなに甘い前提をおいても、エイリアン種族が宇宙に存在する可能性は千兆分の一らしい。

回答32「生命は登場してまだ間がない」

回答34「われわれが一番乗り」
回答41「地球の地殻構造は特異である」

まだまだ続く。
回答43「生命の誕生はめったにない」
回答46「技術の進歩は必然ではない」

回答48「言語は人間のみ」
回答49「科学は必然ではない」
これは回答24とは違う論法でエイリアンとの通信を否定している。
科学のやり方は一つなのだ。知性が人間より高度なエイリアンはいるかもしれないが、科学を取得したのは人間だけだということらしい。

 

なにやらこの章が一番説得力があるな。
広大無辺の宇宙のなかでひとりぽっちの人間。ETCと会いたくても会える術がない人間。

1億年光年先の星から明らかに人為的な信号をキャッチした。
「これこそETCからのメッセージだ!」

1億年前に発信したETCからのメッセージが1億年後の地球に届いたのだ。

ロマンがある。ワクワクする。
こんなことがあと100年以内には実現するんじゃないかと思っているんだけど、さてさてどうなることやら。

そもそもETCは人間と同じ思考をするのか?

すこしこねくりまわすと、人間の笑顔はETCには通じるの?
エイリアンのDNAはたんぱく質で構成されているの?
それ以前にDNA自体があるの?
ETCの性別は男と女なの?
地球上の常識はどこまで通じるの?

宇宙の広がりと時間の不思議。
どうやって生命は誕生したのの不思議。

何故、地球にはこんなに多様な生物がいるのの不思議。
人間と生物は何が同じでなにが違うのの不思議。
どうやって人間は知能を獲得したのの不思議。

いろんな不思議が出てきた。

 

             

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